この会社が破産手続を開始する場合の大きな問題としては、①会社の資金が底をついていたこと(現金が10数万円しかなかった)、②代表者個人も預貯金を事業につぎ込んでいたため当面の生活資金にも事欠く状況のため会社の事業停止後直ちに仕事をする必要があるものの、年齢的にみて再就職が困難と思われたこと、がありました。 特に、②の問題は深刻であり、このことが会社の破産させることを決意できなかった大きな理由でした。 そこで、当職が調査・検討したところ、この会社の商圏内には競合他社が少ないことから同業者へ事業譲渡の可能性があることがわかりました。当職と会社代表者で事業を譲り受ける会社を募り、事業を譲渡しました。事業の譲受会社からは、代表者の仕事振りが評価され、事業譲渡後は譲受会社の従業員として従前の事業に関与することで職を確保しました。 また、事業譲渡代金で破産申立に必要な予納金及び弁護士費用を確保することができました。 このように破産申立と事業譲渡を組み合わせる方法は、非常に有効ですが、譲渡代金が適正であったか等について破産管財人の調査を受けることが予想されます。そのため、事業譲渡代金を適切に決定することはもちろん、譲渡代金の決定に至る交渉経緯、譲渡代金の算定根拠等の資料を確保することも重要です。この点については、破産管財人の経験がある弁護士に相談をすることが良いでしょう。 上記のよう な注意点はあるものの、事業譲渡+破産申立という方法は破産手続費用の確保、代表者の生活再建にも有効と思われますのでご紹介いたします 。