遺産分割協議と弁護士の役割~その①~

南越谷法律事務所の弁護士小池智康です。

越谷市に拠点をおき、さいたま市、川口市足立区等の近隣地区に情報提供することを目的としたこのコラムですが、今回は、遺産分割協議と弁護士の役割についてです。

 

前回のコラムでは、不動産の評価や相続債務の取扱いについての注意点をご紹介しました。

今回は、このような問題に直面した場合、どのように弁護士に相談すればよいか、ということについて考えてみます。

 

まず、遺産分割において、問題が生じた場合の最もスタンダードな方法としては、弁護士を代理人に選任し、その後の交渉等を任せるという方法があります。

 

この方法は、法律的な問題点について、弁護士が調査・検討し、この結果を踏まえて問題点を処理してくれるので法律的な問題点を処理するという目的のためには、一番適切で安心感もあると思われます。

 

他方で、遺産分割という親族間の問題に弁護士が介入することになるため、「相続で揉めている」という感が強く、当事者の感情的な対立が強まったり、問題が解決した後もしこりが残る恐れがあるというデメリットがあることは否めません。

 

そのため、法律相談で弁護士のアドバイスを受けて、ご自分で遺産分割協議を行うというかたも多くいらっしゃいます。

典型的なケースは、市町村や弁護士会の法律相談に申し込んでアドバイスを受けるという方法です。

この方法であれば、弁護士が全面に出ることもないので、当事者間の対立を深めてしまうというデメリットは回避できます。

しかし、法律相談は基本的には単発で時間も限定されているため、十分な調査・検討ができないことがあります。したがって、不動産の評価や債務の取扱いで複雑な問題が生じる事案では詳細な対応のアドバイスまでは難しく、大まかな解決の方向性をアドバイスする限度にとどまると思われます。

そして、大まかな解決の方向性に関するアドバイスをもとに複雑な遺産分割協議をまとめることができる方はそれほど多くないと思います。

この結果、弁護士の関与が必要と思われる複雑な相続事案においては、①当事者間での対立が深まるというリスクをおって弁護士を代理人にする、②当事者間の対立が深まるのを避ける為に弁護士の十分なサポートを得られず遺産分割協議で苦労する、という事態が多く生じているように感じます。

このような事態は、相続問題に直面した方にとっては、非常に不便だと思います。

弁護士に依頼する場合、代理人として交渉等を代理してもらうことが一般的ではありますが、弁護士に依頼=代理人でなくてはならないといことはありません。弁護士に依頼して相続問題解決のための調査・検討をしてもらうが、遺産分割協議は自分で行う、という方法があってもいいと思います。

この方法は、特定の相続人から提案された遺産分割案の意味がよく理解できないが、特段問題がないようであれば提案に応じようと思っている場合、遺産に関する情報整理が不十分なため遺産分割協議が進まないが、弁護士を全面に出すほどではないというような場合には使い勝手がいいと思います。

 

遺産分割協議における弁護士の役割は、代理人として交渉するだけではありません。事案や当事者の要望に応じて、相続人全体にアドバイスすることや、特定の相続人の遺産分割協議を後方からサポートすることもできます。

 

弁護士=代理人  

とのイメージにとらわれることなく、依頼者の皆様のご要望にあったサービスを提供していきたいと考える次第です。