越谷地域の倒産案件の状況~その①・補足~

南越谷法律事務所の弁護士小池智康です。

 

越谷市、春日部市、草加市、川口市、足立区等の皆様に情報を提供することを目的としたこのコラムですが、今回は、前回のコラム(越谷地域の倒産事件の状況~その①~)の内容を補足したいと思います。

前回のコラムでは、破産後の生活再建のために資産を残しておいて欲しいとの趣旨の内容を記載しましたが、そもそも、破産をすれば、資産を処分されてしまうのだから、資産なんて残せないでしょ!との疑問がありそうです。

そこで、今回のコラムではこの点について補足したいと思います。

 

破産が開始されると、原則として破産者の資産は換価され(お金に換えること)破産手続きに必要な費用や債権者への配当に当てられることになります。しかし、破産法では、破産者の生活再建のために一定の資産を破産者の手元に残すことを認めています(これを自由財産といいます)。

具体的には、99万円までの現金、預金等があります。したがって、99万円までの資産は生活再建のために使うことができることになります。

この点に加えて、会社経営をしていた方が会社と同時に破産をする場合には、特に気をつけて欲しいことがあります。

それは、小規模企業共済に加入している場合の取扱いです。

小規模企業共済法15条は、原則、共済金等(解約手当金を含む)を差押えできないものとしています。

そして、破産法34条3項2号は、差押禁止財産は破産財産に属しない(自由財産)としています。

そうすると、小規模企業共済の解約手当金は破産をしても全額手元に残すことができるといおうことになります(99万円という限定もありませんので解約手当金が仮に300万円あっても手元に残すことができます)。

ただし、注意して頂きたいのは、小規模企業共済法15条は、国税滞納処分により差し押さえることはできる、としている点です。

要するに税金を滞納している場合は差押えしますよ、ということです。 

したがって、税金との関係では個別の事案に応じて工夫が必要になりますが、税金の問題をクリアーすれば、小規模企業共済の解

約手当金は生活再建の有力な資金になります。

 

中小企業の経営者の場合、会社員の方と異なり、破産により仕事もなくなるという場合が大半ですので、破産後の生活再建の資金

の確保がより重要になります。

 

破産という制度は、個人の生活再建という目的も有しており、一定の資産を手元に残すことが認められているということを是非知って

おいていただきたいな、と思う次第です。