南越谷法律事務所の弁護士小池智康です。
越谷市をはじめとして、春日部市、草加市、川口市、足立区などの近隣地区の皆様に情報提供することを目的としたこ
のコラムですが、今回は最近の倒産事件についてです。
足立区、草加市、川口市、越谷市、春日部市というエリアは中小・零細企業がひしめき合っている地域です。
この地域でも不況のあおりで倒産案件は相談が途切れない状況ですが、この地域の倒産案件は、ニュースでみるよう
な倒産案件とは全く内容が異なります。
『本業は営業利益を確保していたものの、過去の不動産投資が重くのしかかり・・とか、不採算事業を整理すれば収益
力が回復する見込みがある。』というようなスマートな案件は、越谷周辺の地区ではほとんどありません。
○○会社の専属下請を20年やってきたけど、ここのところ発注がほとんどなくなってしまった、というような本業自体が収
益力を失っている案件が大半です。
このような案件で会社をどうすべきか相談を受けた場合、弁護士としては、傷が深くならないうちに、破産や清算をする
ということも選択肢として提案せざるをえません。
しかし、この様な事案でも何とか事業を継続しようとするのが経営者の性なのかもしれません。
中小・零細企業の経営者の方に事業を廃止することは生活の糧を失うことを意味しています。年齢がいっていれば再就
職もままなりません。そのような状況で事業を廃止するという決断に踏み切れない、ということは理解できます。
また、長年手塩にかけてきた事業を止めるのは今までの自分の努力を否定されているように感じるという方もいらっしゃ
います。この気持ちもよく分かります。
このようにして決断を先延ばしにした結果、預金を全て解約し、せっかく加入していた小規模企業共済を解約し、更に年
金担保貸付を利用し、いよいよどうしようもなくなった段階で弁護士に相談する、ということが往々にしてあります。
もちろん、このような状態でも破産をすることはできます。
しかし、破産後の生活を考えた場合、得策であるとはいえません。
破産の手続に入れば、借金の返済は停止することができますが、破産申立をした後の当面の生活を考えるとある程度
の資産は必要です。ほとんどすべての資産を処分してから破産をする場合、破産後の生活再建が困難になってしまうの
です。
事業を廃止るタイミングを見誤ったために破産後の生活再建を困難にしてしまっては余りに残念です。
会社経営には決断がつきものです。
そして、『事業を廃止する』ことも会社経営に関する決断に他なりません。
会社経営で行き詰まった経営者の方には、ご自身の生活再建を見据え、事業を廃止する、という選択肢も冷静にご検
討いただきたいなと切に願う次第です。