南越谷法律事務所の弁護士小池智康です。
南越谷を拠点として、春日部市、草加市、川口市、足立区に情報提供することを目的とする
このコラムですが、今回は揉める相続・揉めない相続とのテーマでお送りします。
揉める相続とは?
弁護士として相続にかかわっていると、「これは揉めて当たり前ですね」という事案が数多く
ある一方、法定相続分で分割するということについては意見が一致していて、一見揉めそう
もないのに、話し会いが上手く進まない事案も珍しくありません。
「全財産を長男の●●に相続させる」といった争続を発生させるのを狙ったかのような遺言が
ある事案を見慣れている者にとっては、どこでそんなに揉めてるんですか、と不思議に思う
わけです。
そこで、お客さまかいろいろと事情を聞いていくわけですが、これらの事案の多くは、遺産を
事実上管理している相続人(被相続人と同居していた方というパターンが多いです。)が、
遺産の正確な情報を開示していないとの事実が存在します。
遺産の正確な情報を開示に関する当事者の意識とは?
遺産の正確な情報を開示しない、という事実のとらえ方は各相続人で全く異なります。
遺産を管理している相続人は、自分は公正に遺産を管理してきたのだから、今更、開示など
する必要はないと考える・・方もいますし、被相続人名義の通帳を開示して欲しいと依頼すれ
ば、自分の管理状況を疑っているのか・・ということにもなりかねません。
他方、遺産の管理に関与していない相続人としては、とにかく、遺産として何があって、入院費
の清算はどうなっていて等、とにかく正確な情報を知りたい訳です。遺産内容の開示を受ける
ことが最優先です。
遺産の管理に関与していない相続人としては、遺産の正確な情報が開示されないということ
自体で他の相続人に不信感を募らせることがあります。
このような方の場合、遺産内容の開示が進めば、遺産分轄協議は問題なく終わるケースが多
いように感じます。
相続で揉めないために最低限必要なこととは?
振り返ってみると、このケースは遺産分割の割合では意見がほぼ一致しているわけですから、
本来は揉めるようなケースではないはずです。それにもかかわらず、揉めてしまったのは、遺
産の正確な情報の開示という手続を軽視したことが原因と言わざるをえません。
遺留分減殺請求事件のように揉めざるを得ない相続があるのは事実ですが、正しい手続を踏
めば問題が生じないはずだった相続事件というものも多くあります。
本来であれば、揉める必要はないのに手続を間違えて紛争を発生させてしまっては余りに残念です。
これから相続にのぞむ相続人の方々には、
「全相続人に正確な遺産の情報を開示する」
という手続の重要性にご留意いただきたいな、と思う次第です。